結紮切除法(けっさつせつじょほう)-切り取る手術の代表-
結紮切除法は、内痔核の手術法として最も一般的なもので、世界中でこの手術が主流になっています。
まず、内痔核を器具ではさんでひっぱりながら、肛門の外側の皮膚をV字形に切開することから始めます。そして、肛門括約筋を傷つけないように、痔核を粘膜とともに剥離させ、その根元にある動脈をしばります(結紮)。このようにして、痔核に流れる血液を止め、痔核の部分だけを切除します。そして、痔核のあとに便がたまらないように、患部を形成し、手術は終了です。
今でも日本中で行われていますが、当院では20年前からほとんど行なわなくなりました。理由は次の通りです。
- 肛門機能に必要な肛門クッションを切り取らなければならないこと。
- 切り取ることにより、患者さんへの負担が大きい。
- 再発症例を見ると、切り取った部分だけ肛門が狭くなっている。
- 再発症例を見ると、切り取った部分が瘢痕化して硬くなってしまっている。
- 再発症例を見ると、再脱出は瘢痕部分の口側粘膜だけでなく、瘢痕部分も一緒に脱出している。
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- 血管を結紮し、痔核とその後方の皮膚を切り取る。
- 痔核を切除した部分を縫う。
ホワイトヘッド法
痔核のある部位の肛門上皮と粘膜を、全周性(環状)に切除し、縫合する方法です。悪いところをその周りも含めて全て切り取ってしまうので、肛門の機能が損なわれてしまい、後遺症に苦しめられるケースが続出しました。30年前くらいから行われなくなった手術です。
腐食剤注入療法
腐食剤注射療法は、劇薬を痔核に直接注射し、痔核をまるごと腐らせて除去するという方法です。手術後の痛みが強く、現在では行われていません。
凍結療法
液体窒素などで患部を凍結させ、壊死したところを切り取る、という方法です。再発率が高いので、現在ではあまり行われていません。
ゴム輪結紮(けっさつ)療法
輪ゴム結紮器を、内痔核の根元にかけてしばり、血行を遮断することで患部を少しずつ壊死させ、脱落させます。輪ゴムがかからない大きな内痔核や、痛みを感じる神経がある外痔核には使用できません。
また、痔核が落ちるときに出血を起こすこともあるため、内痔核の治療に有効ではありますが、対象となる患者さんが限定される治療法ということができます。
PPH法
PPH法は、1993年にイタリアのロンゴ博士によって開発されました。腸を吻合する器具に似た筒状の器具(サーキュラー・ステープラー)を肛門に挿入し、直腸粘膜を筒の内側にはさんで、内痔核を切り取らず、痔核の2cm上の直腸粘膜を筒状に切り取ります。
しかし、正常な直腸粘膜を切除することへの疑問は残ります。また、肛門の手術には繊細な感覚が要求されます。
それが患者さんのQOL(生活の質)に結びつくことも否定できません。その手術を機械で行うことに抵抗を感じる外科医も多く、予想されたより普及していません。
- 直腸の粘膜がたわんで痔核が脱出する。
- 余剰の粘膜をPPH吻合器の中に引き込み、環状に切除するとともに縫い合わせる。
- 脱出した痔核は内部(口側)へ引き上げられ、本来あった位置に戻る。
レーザー治療法
レーザー治療法は痔核にレーザー光線を当てて凝固し、縮小させて切り取る方法です。病院の外来で簡単に受けられ、入院せずに帰宅することができます。しかし、根治的な手術を目指したものではないため、再発も多くあります。
最近では、半導体を用いた新たなレーザー療法が開発され、注目されています。これをICG併用半導体レーザー療法といいます。ICG(インドシアニン・グリーン)とは、肝臓の機能の測定に用いる色素で、レーザー光線を吸収する性質があり、これを利用することでレーザー光線の照射をコントロールし、治療を行うレーザー療法です。
しかし、まだ非常に新しい方法なので症例数が少ないことと、10年間の経過観察がまだできていないことがあります。また、レーザーを照射後、その周囲が11~2週間ほど腫れる可能性があることと、外痔核には照射できません。